ファーストエイド(応急手当)

更新日:2022年07月13日

傷病者の管理法

1.安全の確認

  周囲の安全を確認し、自らの安全を確保してから傷病者に近づきます。

  道路などに人が倒れている場合には、特に気をつけます。

  

 

2.保温(傷病者の体温を保つ)
  悪寒(ふるえ)、体温の低下、顔面蒼白などがみられる場合は、傷病者の
  体温が逃げないように毛布や衣服などで保温します。
  衣服がぬれているときは、脱がせてから保温します。
 

3.体位の管理法
  傷病者に適した体位(姿勢)を保つことは、呼吸や血液の循環を維持し、
  苦痛を和らげ、症状の悪化を防ぐのに有効です。
  傷病者が最も楽に感じる体位(姿勢)にして安静を保ちます。

  

  楽な体位の一例

   

 

ア.仰臥位
  全身の筋肉などに無理な緊張を与えない自然な姿勢です。
  心肺蘇生を行う際に適しています。

 

イ.回復体位
  傷病者を横向きに寝かせ、下あごを前に出して気道を確保し、上側の手の甲
  に傷病者の顔を乗せます。更に、上側の膝を約90度曲げ、仰向けにならない
  ようにします。反応はないが「普段どおりの呼吸」をしている傷病者や吐物な
  どによる窒息の危険があるとき、やむを得ず傷病者のそばを離れるときに行い
  ます。

 

搬送法

 傷病者を搬送する必要がある場合、その場に居合わせた人がお互い協力して、傷病者を移動します。できるだけ苦痛を与えずに、安全に搬送できる適切な搬送法を学んでおく必要があります。

 

1.担架搬送法

  原則として傷病者の足側を進行方向にして搬送します。搬送中は、動揺や振
  動を少なくする必要があります。

  階段など傾斜のある場所を移動するときは、常に傷病者の頭側が高くなるよう
  に、上りは頭側を進行方向に、下りは足側を進行方向に向けて搬送します。

 

 ■応急担架の作り方には、次の方法があります。

  ア.棒と毛布による応急担架

    毛布を広げ、約3分の1の場所に棒を1本置き、棒を包み込むように毛布を
    折り返します。1本の棒を、折り返した毛布の上(端を15センチメートル以上
    確保します。)に置き、残りの毛布を折り返します。

 

     

  

    

 

  イ.衣服を用いた応急担架

    5着以上の上着の両そでに1本ずつ棒を通します。

    4~5着以上の上着と2本の棒が用意できる場合に使用できます。

    

 

  ウ.毛布のみで作る応急担架

    毛布の両端を丸めて持ちやすくして握り、持ち上げて搬送する方法です。

    4名以上救助者がいる事が望ましいですが、毛布のみで短時間で作成で
    きます。

    

    

 

2.担架を用いない搬送法(徒手搬送)

  担架を使用できない状況で、急いで傷病者を移動させる必要がある時の搬送
  法です。

 

 ■1名で搬送する方法

  ア.背部から後方に搬送する方法

    おしりをつり上げるようにして搬送します。 

    

 

  イ.負ぶって搬送する方法

    傷病者の両腕を交差または平行にさせて、両手を持って搬送します。

    

 

  ウ.抱きで搬送する方法

    乳児、小児や小柄な人は横抱きにして搬送します。

    

 

  エ.布、シーツを利用して搬送する方法

    傷病者を毛布やシーツで包んで搬送します。傷病者の胸腹部を圧迫するこ
    とが多いので注意します。 

    

 

    ◎ポイント

     1名での搬送は避け、複数の者による搬送を心がけます。

 

 ■2名で搬送する方法

  ア.傷病者を前後から抱えて搬送する方法

    

 

  イ.両手を組んで搬送する方法

    

 

 ■3名で搬送する方法

  3名の両腕を傷病者の下に十分入れてから抱え上げます。

   

 

 

 

止血法(直接圧迫止血法)

 体内の血液が急速に失われると出血性ショックという重篤な状態になり、生命に危険を及ぼすといわれています。そのため、出血量が多いほど、迅速な止血手当が必要となります。止血法としては、出血している部位を直接圧迫する「直接圧迫止血法」が基本となります。

 

 1.出血部位を確認します。

 

 2.出血部位を圧迫します。

   清潔なガーゼやハンカチ、タオルなどを傷口に当て、その上から、出血部位
   を強く圧迫します。

   大きな血管から出血している場合、片手で圧迫しても止血できないときは、
   両手で体重を乗せながら圧迫します。

    

            直接圧迫止血法(ビニール袋使用)

 

   ◎ポイント

    感染防止のため、直接血液に触れないようビニール袋やゴム製の手袋を使
    用する。ビニール袋などでも代用できます。

    出血が止まらない場合、ベルトなどで手足の根元を縛る方法もありますが、
    神経などを痛める場合もあるため、訓練を受けた人以外は行わないでくだ
    さい。

    圧迫部位が出血部からずれていたり、圧迫する力が足りないと十分な止血
    ができず、ガーゼなどが血液で濡れきます。

 

【参考】ショック状態への対応

1.ショックの見方

 ・顔色を見る。

 ・呼吸を見る。

 

 ◎ポイント(ショックの症状)

  主なものは次のとおりですが、同時に全てがみられるわけではありません。

  ・目はうつろになります。

  ・表情はぼんやりしています。

  ・唇は白っぽいか紫色をしている。

  ・呼吸は浅く、速くなります。

  ・冷や汗が出ます。

  ・体は小刻みにふるえます。

  ・皮膚は青白く、冷たくなります。

 

2.ショックに対する応急手当

 ・傷病者を水平に寝かせます。

 ・ネクタイやベルトなど締め付けるものを緩めます。

 ・毛布や衣服をかけ、保温します。

 ・声をかけて安心させます。

病気やけがに対する応急手当

1.けいれんに対する応急手当

 ・発作中の転倒などによるけがの予防と気道を確保する。

 ・傷病者の周りに椅子などがある場合、それでけがをしないように移動させる。

 ・階段などの危険な場所から傷病者を遠ざける。

 ・けいれん中、無理に押さえつけると骨折などを起こす危険がある。

 ・舌をかむことを防ぐため、口の中に手や物を入れることはしてはならない。

 ・けいれん発作後、反応がなければ心停止の可能性があるため救命処置を実
  施する。

 ・けいれん発作の持病があることがわかっている場合、意識が戻るまで回復体
  位にし、気道確保して様子をみる。

 

2.熱中症に対する応急手当

  暑さや熱によって体に障害が起きることを熱中症といい、重症の場合、命を落
  とす危険もあります。

 

 ■熱中症の症状

 ・手足の筋肉に痛みが生じたり、けいれんしたりすることがある。

 ・体のだるさを訴え、吐き気、頭痛、めまい、立ちくらみが生じることがある。

 ・注意力が散漫になるのも典型的な症状である。

 ・意味不明な言動がみられた場合は危険な状態です。

 

◎ポイント

 熱中症は炎天下の環境で起こるものとは限らず、特に乳児やお年寄りは冷房
 のない暑い室内や長時間車の中にいるだけでも生じます。

 

■熱中症の応急手当の方法

 ア.涼しい環境に退避させる。

  風通しのいい日陰や冷房が効いた室内が好ましい。

 

  イ.服を脱がせ、体を冷やす。

   体から熱をとるには、うちわや扇風機で風を当てることが効果的である。
   衣服を脱がせて皮膚を露出し、あまり汗をかいてないようであれば、皮膚に
   水をかけて濡らし、風を当てる。皮膚を濡らす場合、冷たい水よりもぬるい水
   の方が効果的である。氷のうなどが準備できれば、首、脇の下、太ももの付
   け根などに当てると冷却効果が高まる。

   

 

  ◎ポイント

   水分、塩分を補給する。

   傷病者は、汗をかいて脱水状態になっているので十分な水分補給が重要と
   なります。傷病者が水分摂取を望まなくても摂取することを勧めます。

   汗により水分だけでなく塩分も失っているので、少量の塩を加えた水か、塩
   分を含んだ経口補水液やスポーツドリンクを飲ませるのがよいです。

 

  ウ.病院を受診する。

   意識が朦朧とし、自分で水が飲めない傷病者に無理矢理飲ませてはいけま
   せん。水が誤って肺に入ってしまう危険があります。直ちに救急車を呼び、病
   院で点滴による水分補給を受ける必要があります。

 

  エ.体位管理をする。

   傷病者にとって楽な体位を取ります。立ちくらみがする場合は、仰臥位にする
   と効果がある場合があります。

 

3.傷に対する応急手当

 ア.傷口の手当

 傷口が土などで汚れているときは、水道水などきれいな流水で十分に洗いま
 す。

 

 イ.包帯法

 ・包帯は、傷の保護と細菌の侵入を防ぐ効果があります。

 ・包帯は、傷を十分覆うことができる大きさのものを使用します。

 ・出血しているときは、十分な止血を行ったあとに使用します。

 ・傷口が開いている場合は、可能であれば滅菌されたガーゼを使用します。脱
  脂綿や不潔な布は使用しないでください。

 

 ◎ポイント

  包帯は、強く巻きすぎると血行障害を起こす危険があり、緩すぎると包帯が
  ずれるので注意して巻きます。

  包帯の結び目は、傷口の上を避けるようにします。

 

 ウ.三角巾

 ・体の様々な部分に使用できます。

 ・様々な大きさの傷に使用できます。

 ・傷口には、ガーゼ等を当ててから使用します。

 

 

4.ねんざ・打ち身(打撲)に対する応急手当

  患部を冷却パックや氷水などで冷やすことで、内出血や腫れを軽減させます。
  冷却パックを使用する際には、皮膚との間に薄い布などを挟み、冷却パッドが
  直接皮膚に触れないようにします。

 

5.骨折に対する応急手当

 ア.部位の確認

  ・どこが痛いかをたずねます。

  ・痛がっている部位が変形や出血していないかを確認します。

 

 ◎ポイント

  確認する際は、できるだけ動かさないようにします。

   -骨折の症状-

    ・激しい痛みや腫れがあり、動かすことができない。

    ・変形している。

    ・骨が飛び出している。

    ・骨折の疑いがあるときは、骨折しているものとして手当をします。

 

 イ.固定(そえ木、新聞紙、三角巾など)

 ・変形している場合、無理に元に戻してはいけません。

 ・協力者がいれば、骨折している箇所を支えてもらいます。

 ・傷病者自身で支えることができれば、自ら支えてもらいます。

 ・そえ木、重ねた新聞紙・段ボールや雑誌などを患部に当て、三角巾等で固定
  します。

  

     そえ木を使用した固定      新聞紙を使用した固定

 

  

     三角巾などで腕をつる

 

   

   段ボール等を使用した足の固定       足の固定

                  ※番号は三角巾などで結ぶ順番を示しています。

 

   ◎ポイント

    そえ木等は、骨折部の上下の関節が固定できる長さのものを使用します。
    固定するときは、傷病者に声をかけながら行い、表情の変化に注意して行
    います。

 

6.首を痛めている場合の応急手当

  自動車事故や高いところからの墜落によるけがは、首の骨(頸椎)を痛めてい
  る可能性があるので、首の安静を図ることが大切です。

  ・首が動かないようにします。

  ・意識があれば、頭を動かさないようにします。

  ・次の症状が一つでもみられた場合、首を痛めていると判断します。

    首が痛い。        手足がしびれる。

    手足に力が入らない。   呼吸が苦しい。

  ・意識がなければ、首を痛めているものとし、救急隊が到着するまで次の対
   応をします。

  ・頭を両手で支え、首が動かないようにします。

  ・頭や顔に傷があるか注意します。

  ・声をかけて安心させます。

   

 

   ◎ポイント

    傷病者のいるところが安全であれば、頭を動かさないように両手で支えて
    固定し、救急隊に引き継ぎます。

    傷病者のいるところが危険な場所であるなどやむを得ない場合に限って、
    安静状態を保ちながら必要最低限の移動を行います。

 

7.やけど(熱傷)に対する応急手当

  やけど(熱傷)は熱いお湯や油が体にかかったり、炎や熱いものに触れたとき
  に生じます。あまり熱くない湯たんぽやこたつの熱などが長時間同じ場所に当
  たっていた場合(低温熱傷)や塩酸などの化学物質が皮膚についた場合(化学
  熱傷)にもなることがあります。

 

 ■やけどの応急手当の方法

 ・すぐに水で冷やす。

  やけどを冷やすことで痛みが軽減され、やけどが悪化するのを防ぎ、治りを
  早くします。

   

               やけどの冷却

   ◎ポイント

    ・水道水などのきれいな流水で冷やします。

    ・靴下などの衣類を身についている場合は、その上から冷やします。

    ・氷や冷却パックで冷やすと、冷えすぎてしまい、かえって悪化することがあ
     ります。

    ・広範囲にやけどした場合、やけどの部分だけでなく、体全体が冷えてしま
     う可能性があるので、過度な冷却は避けます。

 

 ■やけどの程度と留意点

  やけどの程度が軽いか重いかは、やけどの深さと広さで決まります。

   ・一番浅いやけどの場合

    一番浅いやけどは、日焼けと同じで皮膚が赤くなり、ひりひりと痛みます
    が、水ぶくれ(水疱)はできません。このような場合、よく冷やすことで十分効
    果があり、ほとんど病院に行かなくても自然に治ります。

 

   ・中くらいの深さのやけどの場合

    水ぶくれができるのは、中くらいの深さのやけどです。水ぶくれは、やけど
    の傷口を保護する役割があるので、破らないように注意してください。すぐ
    に水で冷やした後、指先などのごく小さいやけど以外は、清潔なガーゼなど
    で覆い、水ぶくれが破れないように注意し、病院を受診してください。やけど
    を覆うものは、ガーゼなどのほか、皮膚にくっつかないプラスチックシートな
    どがよいでしょう。

 

   ・最も深いやけどの場合

    最も深いやけどは、水ぶくれにならず、皮膚が真っ白になったり、黒く焦げ
    たりします。やけどがここまで深くなると、かえって痛みをあまり感じなくなり
    ます。このようなやけどは治りにくく、手術が必要になることもあるので、痛
    みがないからといって安心せず、必ず病院に行きましょう。

 

    ◎ポイント

     小さい子どもやお年寄りは、比較的小さなやけどでも命に関わることがあ
     るので注意が必要です。火事などで煙を吸ったときは、やけどだけでなく
     のどや肺がきずついている可能性があるので、救急車で病院へ行きま
     しょう。

 

8.歯の損傷に対する応急手当

  歯茎からの出血は、綿球などを用いて圧迫止血します。

 

   ◎ポイント

    抜けた歯は、生の卵白がなければ牛乳に入れて、速やかに歯科医を受診
    してください。その際、抜けた歯の根元は触らないようにしてください。

 

9.溺水(水の事故)に対する応急手当

 ■溺れている人の救助

海、川、湖などで溺れている人を見つけたとき、直ちに119番通報(海上では118番通報)し、救助を求めます。発見者が一人の場合、大声で助けを呼び、AEDを手配します。もし捕まって浮くことができるようなものがあれば溺れている人に向けて投げ入れます。さらに、ロープなどがあれば投げ渡し、溺れている人を岸まで引き寄せます。

 

   ◎ポイント

    溺れている人の救助は、救助者が巻き込まれて溺れてしまうケースがあ
    ります。確実に救助者の安全が確保できる状況でなければ、うかつに救
    助せず、消防職員やライフセーバーなどの専門家に任せるのが原則で
    す。溺れている人が水没したら、水没箇所がわかるように目標を決めてお
    き、到着した消防職員やライフセーバーなどの専門家に伝えます。

 

 ■入浴中の溺水

  浴槽内のお湯に顔をつけた状態の傷病者を発見したとき、すぐに湯せんを抜
  きます。

 

 ■心肺蘇生の実施

  水の中から引き揚げた傷病者に反応がなく、「普段どおりの呼吸」をしていなけ
  れば、心肺蘇生を実施します。水を吐かせるために、傷病者の腹部を圧迫した
  りする必要はありません。

 

お問い合わせ

橋本市消防本部
〒648-0072
和歌山県橋本市東家六丁目2番1号
電話:0736-33-0119 ファクス:0736-33-0630
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